ゲールは、アニメ『宇宙戦艦ヤマト』に登場する、架空の人物。(声:阪脩)
地球とガミラス・イスカンダルの中間地点に浮かぶバラン星のガミラス基地司令官であったが、デスラー総統に志願して銀河系方面軍(劇中では太陽系方面軍とも表現されていた)作戦司令長官として赴任してきたドメル将軍の副司令官に降格された上、いきなり鞭で自室の家具やコレクションを粉々に叩き壊され、『趣味の悪さはガミラス前線基地随一だな、ヘドが出るわ』と罵られ、深い恨みを抱くに至った。
バラン星の原住生物バラノドンを利用して生物兵器に仕立て上げ、ドメルに巨大生物特攻作戦の採用を具申するも一蹴された上「ここの司令官は私だぞ」と釘を刺されてしまう。その日の夕食時に悪酔いして従兵や侍女(マントの下はピンクのパンティだけという姿)に酒瓶を投げて八つ当たりするが、諦めずにパラノドン特攻兵器を完成させ、予行演習ではヤマトのダミーの撃破に成功。勢いをかって独断でヤマトを攻撃するが波動砲の返り討ちに逢って失敗に終わり、再びドメルから叱責される。
その後、ドメルと共に古代進と真田志郎による宇宙要塞破壊の報を受けた際、喫煙中のドメルにライターを差し出すが着火に失敗するシーンでは「君のライターは(そして君自身は)あの要塞と同じで役立たず」と嘲笑されている。
ドメルはゲールに図ることなく人工太陽を落下させてバラン星基地もろともヤマトを破壊しようとしたが、ゲールが本星に密告してデスラー総統が中止命令を下したため、結果としてヤマトに波動砲による反撃の猶予を与えてしまい、破壊された人工太陽が降り注いでバラン星基地は失われた上、ヤマトも取り逃がしてしまった。
バラン星での作戦失敗の責任を問われてガミラス本星に召喚されたドメルを裁く軍法会議では、総統への忠誠心を理由に自らの密告を正当化。かつての上官の死刑判決を見るも、デスラーの決断でドメルは恩赦され、再びドメルの副官としてヤマトとの決戦に参加させられる。
七色発光星団の戦いでもドメルの作戦は九分九厘成功し、勝利へあと一歩にせまったが、ドリルミサイルを逆転され艦隊を失う。デスラー総統への忠誠心とガミラスへの愛国心に燃えるドメルは、またしても一言の相談もなく自爆を決断。ゲールは不承不承、というよりただ呆然とするうちにドメルと命運を共にさせられた。もっとも瞬間物質輸送装置やドリルミサイルの作成中、万が一作戦が失敗した場合は、「君も得意とする総統への忠誠心こそ、最後の武器になるだろう」とドメルは自爆をほのめかしているが、これは密告を総統への忠誠心ゆえと自己弁護したゲールへの当てつけでもあろう。
本来はドメルの前任司令官という点では同格であり、その地位も決して低くは無く(前述通り専属の従兵や侍女がいる)相応の能力は備えていたと思われる。ただ、シュルツの敗因を消極的ゆえと批判したり、バラノドン特攻作戦の指揮ぶりからも力押しの猛将タイプとみられ、巧緻な作戦を好むドメルとは反りが合わなかったのであろう。戦術面では失敗が目立つが、できるだけ本星から離れた所でヤマトと戦うべきであるという持論は地球征服後の移民という戦略面からみると極めて妥当性が高く(本星に戦場が近づくほど移民中継基地破壊のリスクは高まる)、優れた戦術家ではあるが戦略的な視野に問題のあったドメルとはまさに正反対のタイプである。
ゲールとドメル以後、「力(特に軍事力・科学力)はあれど「人の和」のない異星人が、内ゲバの果てに、非力だがチームワークと機転があるヤマトに破れる」のは、シリーズの定番となった。
一般的な将軍の軍服が緑地に黒の6対点線、肩部に3対点線なのに対し、彼の軍服は緑地に赤の6対点線、肩部は点線が無い。
当初の設定では、ゲーリングや、ゲルという名前になっていた。ヒス副総統と共に、デスラー総統暗殺未遂事件をおこし、逆にデスラーに粛清される予定であった。
元ネタは、贅沢と傲慢と無能で知られたナチス・ドイツの空軍総司令官ゲーリングだと思われる。
また、松本零士の漫画では、ガミラス本星の戦いの後、脱出したデスラーに付き添っていたのは、タラン将軍ではなく、ゲールであった。
なお、劇中では上官ドメルに対し、一応は敬語を使って接していたが、ゲーム版(「遥かなるイスカンダル」「イスカンダルへの追憶」)では、かなり粗野な口調と態度に変更されており、ゲールの狭量さとドメルへの反感が強調されていた。
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